鬼から電話は本当にトラウマになるのか?専門家が暴く恐怖しつけの弊害
「痛い目や怖い目を経験させないと、善悪の判断がつかないのではないか」という古い通念を信じる保護者はいまだに存在します。しかし、発達心理学の研究が証明している恐怖によるしつけの真相は、その真逆です。恐怖による介入は長期的には必ず鬼から電話の逆効果と呼ぶべき事態を招きます。
第一の弊害は「刺激に対する耐性の形成(慣れ)」です。最初は赤鬼の顔だけで泣き叫んでいた子供も、回数を重ねるうちに「どうせ画面の中の映像だ」「お父さんもお母さんも鬼に連れて行かせたりはしない」と無意識に学習します。すると以前の刺激では動かなくなり、親側はさらに恐ろしいキャラクターを選んだり、「本当に山に置いていくよ!」と脅し文句を過激化させたりするエスカレーションの泥沼に陥ります。
第二の深刻なしつけの弊害は、「外罰性・暴力性の連鎖」です。親から「怖い思いをさせられて強制的に従わされた」経験を積み重ねた子供は、他者との葛藤を解決する手段として「恐怖と力の行使」を学習します。その結果、保育園や幼稚園でお友達が思い通りにならないとき、威嚇したり、手を出したり、大声で脅して従わせようとする行動パターンを模倣しやすくなることが多くの研究で実証されています。
「善悪の判断」とは、自分の行動が他者にどのような影響を与えるか、なぜその行動を取るべきなのかを言語と共感によって理解するプロセスです。恐怖による支配は、その思考プロセスを遮断し、「見つかったら怒られるからやらない」「鬼が来ないならやっていい」という極めて歪んだモラル観を育んでしまいます。