名作『タッチ』最終回の真相と和也の死|令和に響くあだち充の革命
漫画『タッチ』の結末において、多くの新規読者が驚愕するのが「甲子園の全国大会決勝シーンが一切描かれていない」という構成の妙です。予選のライバルである須見工業・新田明男との激闘を制した明青学園は甲子園へ進出しますが、全国大会の熱戦そのものはダイジェスト的に処理され、物語は静かな日常の余白へと着地します。
最終回で提示されたのは、明青学園の部室と上杉家の居間に飾られた「全国制覇の優勝盾」と1枚の集合写真でした。なぜ、あだち充氏はスポーツ漫画の最大の見せ場であるはずの決勝戦を直接描写しなかったのでしょうか。
その答えは、本作の主眼が「野球の勝敗」ではなく「上杉達也という一人の少年が、亡き弟の身代わりではなく、自分自身の意志で浅倉南と向き合うプロセス」にあったからです。甲子園のグラウンドではなく、人混みを離れた川辺の電話ボックスで交わされた達也の告白——「上杉達也は浅倉南を愛しています。世界中の誰よりも」という言葉こそが、本作における真のゴール(優勝)でした。