トルコは何大陸?欧州かアジアかボスポラス海峡が分ける境界の謎
国際政治学者サミュエル・ハンチントンは名著『文明の衝突』の中で、トルコを「ひとつの文明に属しながら別の文明へと国家を方向転換させようとした結果、内部で自己同一性が引き裂かれた国(引き裂かれた国:torn country)」の代表例として挙げました。しかし、冷戦終結から四半世紀以上を経た現在、トルコはその「二股構造」を弱点ではなく外交上の強力な武器へと転換させています。
欧米と中東・ロシアの双方が対立する局面において、トルコは常に双方向へのアクセスカードを保持しています。黒海と地中海を結ぶボスポラス・ダーダネルス海峡の通行権を握る「モントルー条約」の管理者権限を行使しつつ、NATO加盟国でありながらロシアや中東諸国とも独自に対話を継続できるバランサーとしての立ち位置です。
読者がトルコの立ち位置を読み解く際、「欧州かアジアか」という二者択一を迫る視点そのものを手放すことが推奨されます。ビジネスや製造業のサプライチェーン、法制度を見る際には「欧州市場と高度に連結した近代国家」として評価し、資源調達やエネルギー輸送、宗教的ネットワークを見る際には「中東・ユーラシアの盟主」として評価する。この二眼レフのような多角的な視線こそが、トルコという国家の実相を最も的確に捉える判断基準となります。